大連は中国の他の地域に比べてどうなのかという比較論的な観点からお話をしたいと思います。
 まず、大連工業団地の現状について説明しますと、分譲面積が185万㎡で約70%が既に分譲済みであり、富山県からはYKKとサンエツ精工が入居しています。
 過去3年ほどは日本経済の状況とアジア経済危機などの影響で分譲があまりスムーズにいっていませんでしたが、今年になってから動き始めています。分譲価格は45ドル/1㎡で、50年間の使用権であります。
 大連の投資環境については、中国の他の地域に比べてかなり良好である部分と上海、揚子江下流地域、広東省の広州、深センに比べてまだまだ努力が必要だという部分があるのでご説明します。

<労働力について>
 上海、広東省に比べて極めて優秀な労働力を比較的安く調達できます。南方は出稼ぎが多いですが、大連開発区においては基本的に大連市の人間であり、非常に純朴で定着率もよく極めて熱心に働きます。現在のところ労働集約型産業の進出が多いといえますが、指先が器用、視力が良いなどの点でも大連は高く評価できます。
 日本語が話せる人材(いわゆる、日本語人材)も豊富で、同じような人材を例えば、上海で見つけようとしてもなかなか見つからない。見つかったとしても高給になります。

<大連市人民政府、大連開発区管理委員会の日本企業への支援>
 中国に進出する場合、やはりその地域の地方自治体がどれだけ支援してくれるかというのは非常に大きなポイントでありますが、大連は他地域に比べてその対応は抜群にいいといえます。それは、大連において日本企業のプレゼンスが大きいからです。(日本企業は大連に1,800社以上)
 中国の投資環境はハードの面では整ってきましたが、ソフトの面ではまだまだの部分が多くあります。大連市ではソフト投資環境を良くしようという大運動を行っており、そんな場合、まず日本企業に声をかけてくれます。何か問題が起きた場合でも、大連市の担当者が日本企業との調整役を果たしてくれます。広東省の広州、深センなどには日本企業が多く進出していますが、たくさんの成功例がある一方、同じく失敗例も多くあります。そんな場合においては、当局の手助けがあるかが重要なポイントです。
 大連では進出企業に問題があれば、大連市政府、大連開発区管理委員会が適切な対応をしてくれます。(写真:大連工業団地)

<大連市投資環境の課題>
 大連市には裾野産業、いわゆるサポーティングインダストリーがまだまだ足らないといえます。上海、深センあたりでは、台湾、香港の下請け企業が多く進出しており、部品の調達、工程の一部委託などが可能でありますが、大連市はその点ではまだ不充分です。部品産業が比較的不足しているといえます。
 また、物流という点でも、例えば、上海の日本企業にものを納めるには無理があります。

<大連開発区の今後の対応>
 大連市では日本の中小企業をに呼び込むため、まず、賃貸工場の建設を検討しています。大体、標準工場で年間200~300元/1㎡の賃貸料となっており、企業は必要なスペースを借りて操業することになります。企業としては、すぐに工場を立ち上げることができ、リスクも少なく、仮に失敗してもすぐに撤退することも可能です。また、中国ビジネスを始める場合、物づくり以外の分野でのサポートとして、労働者の雇用・管理、通関業務、税務申告の代行のほか共同の食堂経営、宿舎経営などのサービスを提供する計画があり、まもなく動き始めます。

 大連市ではいわゆる後背地の大市場を目的とする以前に、1,800以上もの日本企業が大連に既に進出しており、日本企業だけでも取引が成立するというメリットがあります。
 
 

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