韓国ビジネスセミナー
 
 “最近の韓国経済動向及び日韓貿易概況”
                          大韓貿易投資振興公社名古屋貿易館
                                館長   
朴 憲一
 
 
 
 平成11年4月16日に大韓貿易投資振興公社名古屋貿易館館長の朴 憲一氏による韓国ビジネスセミナー を開催いたしました。
 今、韓国経済の好転が伝えられるようになり、今後の日韓間のビジネス促進が 期待されております。本稿では、講演の内容の主要部分を紹介したいと思います。



-最近の韓国経済-

 4月11日の日本経済新聞を見ましたら、アジアの成長率の 見通しという新聞記事がでています。韓国、マレーシアはプラスの方に改善 していきます。そしてインドネシア、香港、タイは依然としてマイナス成長率を 見せております。この経済新聞一枚で、最近の韓国経済成長に関しては充分結論が でてくるのではないかなと思います。
 韓国は去年1年間二つの政策を金大中大統領が 提案して政府、企業そして韓国国民が一生懸命に働きました。韓国政府はIMF体制を 克服するために流通拡大をして外貨を稼ぎました。そして海外企業を投資誘致して外貨を 稼ぐという二つの政策を通じて、結局韓国は去年1年間IMF体制を克服したと思います。 今の状況は韓国の経済は完璧にIMF体制を克服して経済的に安定したとは言えないのですが、 一応危機を乗り越えたという評価をもらっています。
 この流れを説明をすると韓国の経済に関しては、 だいたいの説明はできるんじゃないかと思います。そして流通拡大をするためには輸出商品の競争力を 確保しなければならない。競争力を確保するため韓国は技術化を図っています。
 韓国製品の立場は、 去年400億ドルの貿易黒字になったんですが、これは実際に流通拡大を通じてできたものではなくて、 韓国国内には外貨がないですから輸入したくても輸入ができなかったんです。こういう事情で去年 だいたい400億ドルの貿易黒字になったんですが、今年は輸出拡大し、100億ドルの貿易黒字を目指しています。
 もうひとつの柱は外資誘致です。日本の企業、アメリカの企業をたくさん誘致するには韓国市場が 安定しなければならないです。生産にしろ消費にしろ設備投資にしろこういういろんな項目が安定して、 韓国市場全体が安定しないと海外の企業は進出しないんです。 消費、生産、設備投資関係は98年末になりまして本当にほぼ回復しています。 97年12月IMF体制が発生したときの外貨保有高が約88億ドル、 99年2月現在外貨保有高が約520億ドルです。海外の企業は韓国市場はある程度安定した という評価をしています。
 そしてこういう海外企業が韓国にはいってきて韓国国内で 生産活動して営業活動するためには韓国市場自体の安定性も重要な項目ですが、 韓国市場の規模も海外企業としては重要なキーポイントになるんです。 こういう市場の規模、市場の大きさが韓国はだいたい30億ドルで世界中で11番目の大きさ。 そして輸出拡大、リストラ、金融構造を調整して、商品、生産、 設備投資関係が98年度末までにほぼ解決されたという信用を見せているんです。 そうすると海外の企業が韓国に入ってきて韓国で研究工場を作り、生産活動をします。そ れによって技術力が向上します。こういう技術が3年後、 10年後の韓国技術力を高めていくことになります。
 世界的に有名な信用評価機関であるムーディーズとかS&Pは韓国の経済に関して、 投資適格国という評価をしているんです。
 結論をもう一回言いますと完全にIMF 体制を克服したわけではないんですが、ある程度克服して、これから2、3年間には完全に 乗り越えるというのが、一般的な韓国経済の見通しだと思います。


-輸入先多角化制度廃止の概要-

 1965年から今まで34年間日本と韓国は取り引きしています。それで、だいたい日本という 国は年間300億ドルを輸出し、韓国から日本が輸入する規模はだいたい150億ドルです。 合わせてだいたい400億から450億ドルの貿易規模をみせています。
 そして65年から98年まで34年間貿易をして、韓国が日本に関して持っている貿易赤字の累計が 1,414億ドルです。34年間で1,414億ドルというのはものすごく大きい数字です。 なぜ韓国は日本に関して1回も貿易黒字になったことがないかという背景は簡単にい うと二つの要因だと思います。
 一つはすべての産業に関して韓国の技術レベルが 日本の技術より低いこと。もう一つは韓国人は日本のものが好きなため対日依存度が 高いということです。なぜかといいますと日本が近くてその製品の質がいいため、 日本の物を輸入しなければならない。同じ物をアメリカから輸入するよりは、 日本から輸入した方が、日にちが短い、アフターサービスが正確で早い、 まわりに日本語のできる人材がたくさんいます。ですから、企業としては 日本の物が当然好きなのです。
 これをこのままにしておいたら、 対日貿易赤字がどんどん増えていきます。ですから十何年前からア メリカからの輸入はできるのですが、日本から輸入はできないという 輸入先多角化制度というのを政策的につくりました。日本の企業として 韓国に輸出したくても韓国政府が輸入禁止していますから、輸出ができないんです。 移動電話機、自動車、時計、24インチテレビなど、いろんな産業のものがたくさんあります。 これが、今年6月30日になりますと、撤廃されます。これはなぜ撤廃されるかといいます と97年12月IMF体制が発生しました。それでIMFの世界銀行の当局者たちが韓国に きて韓国の政策をすべてチェックして、日本に関して輸入制限政策があるということが わかって、これは自由貿易化という点に関してはよくないということで撤廃するのです。 これが、IMFによって、日本に市場が開放されたということなのです。
 ここでは、いくつかの産業に関してこの制度が撤廃した後で韓国の産業に 関してどういう影響を与えるかに関して簡単に紹介したいと思います。
 まず、自動車ですね。韓国でも自動車生産が年間400万台を超えるんです。 しかし、自動車を生産する生産性に関しては日本の4分の1です。これが問題です。 日本の生産性の4分の1しかないというのは技術力・生産性が落ちているということです。 簡単に言いますと今韓国で生産されている車の核心部品はまだ日本産です。
 家電製品になるんですが、だいたい日本の物が韓国に輸出されないで、 日本の企業が東南アジアに進出して生産したものが、東南アジアから韓国の方に輸出されるの ではないかという見通しを持っております。 結局韓国の物と日本のタイ産との競争になる見通しです。 品目によっては韓国も技術力を持っているものもあるんですが、 韓国が実力を持っていない商品に関しては、場合によっては、崩壊する見通しもあります。  例えば、VTRの場合は韓国の製造技術もものすごく高くなっていますが、 問題はVTRの中で一番重要な核心部品は日本から輸入しているということです。 ですから、日本産との価格差を20%から30%に維持するためには韓国の企業は赤字経営をし なければならないという懸念があります。
 日本の企業が部品の供給を中断すると韓国は パアになるということです。今までは韓国は輸入先多角化制度というのがありましたから、 日産にしろトヨタにしろ自分が輸出したくても、自分の会社の名前で輸出できなかったので 韓国代理店を通じて輸出していたのですが、今度から皆オープンにしますから、場合によっては 日本の企業が部品を供給するのをストップする可能性も考えられます。こういう場合は韓国は 今まで投資してきたのが、パアになりますから大変です。
 そして、機械類ですが、 貿易赤字の80%が機械、機械類の部品です。機械類部品を輸入するのは結局生産ができ ないということです。これから韓国は日本企業に対して市場開放しますので、日本企業は どのようにすればいいかということをアドバイスしていきたいと思います。
 まず、 工場を見ましたら、韓国の生産基盤は弱いといえます。これは技術力がないので、日本から 輸入しなければならない。韓国は日本が地理的に一番近くですから、政府にアメリカから輸入 してほしいといわれても企業の投資者としては当然日本から輸入します。それは同じ物で同じ 性能だったら、日本からの方が安いからです。
 日本企業といえば特徴が一つあります。正確性です。 買うのだったら、日本から買いたいというのが韓国企業の特徴です。 これが、先ほど私が言いました韓国企業が日本企業に対して、依存度が高いということです。
 こういうふうにこれからもっと韓国市場が日本企業に対して、資本財を日本から輸入し ようする。これは逆に日本からみると、どんどん韓国の方に資本財関係の輸出をするチャンスが 広がっていくということです。日本企業はぜひ韓国市場を舞台にして、韓国企業と一緒に仕事を していってほしいというのが政府の方針です。


-対韓進出戦略について-

 韓国に関してビジネスをやる場合は、韓国国内の会社を決めて、 パートナーを公式的に探してほしいということです。これは、ものすごく重要な項目だと思います。 そういう仕事は大韓貿易投資振興公社がやりますから、1週間以内に皆さんにパートナーを探して あげます。ですから、もし韓国市場に興味がありましたら、ライバル企業よりは一歩早めに韓国の 方に目を向けてほしいということを強調したいです。
 韓国では、もちろん日本もそうですが、 環境ビジネスはこれからの産業です。韓国の環境メーカーは技術がないんです。環境と言えば日本 ですが、韓国のメーカーは日本の環境メーカーとほとんど結びついています。
 ですから、これか らの環境市場に関しては、韓国はものすごく明るいと思います。  韓国政府が外国の企業に関して 呼びかける5つの産業があります。電機、電子、通信、機械、そして環境です。この5つの業種に 関して韓国国内の企業は、技術が弱いですから、この業種のいい技術を持っている会社はぜひ韓国に 進出してきてほしいということです。
 こういう業種、高度技術産業といいますが、いろんな優遇 措置があります。まず、法人税免税、取得税免税です。韓国国内で海外投資企業として認められるた めの最低資本金がありますが、最低資本金がいくらかというと500万円です。ですから500万円だけあ れば、こういう業種の中にある皆さんは、韓国のパートナーを探して資本参加して、新しい会社を 作ってもいいということです。世界11番目である韓国市場で商売ができるということになります。
 
 今年6月2日にソウルでAPEC投資博覧会が開催されます。
 世界中からだいたい2000名が来る予定ですが、もし1年に1、2回ぐらい韓国に来る 予定の企業がありましたら6月2日のこの期間にあわせて、この投資博覧会を見にきてほしい ということを提案したいと思います。
 それでは時間になったのでだいたいこのへんで終わら させて頂きたいを思います。

                     (以 上)

ソウル市街




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