第1回北陸(日本)・韓国経済交流会議にあわせ、平成12年7月6日、富山第一ホテルにて韓国産業資源部主催の韓国投資環境説明会が開催されましたので、その概要を以下のとおりご紹介いたします。

【 経済危機以降、新しく変化した韓国の経済現況 】

 韓国政府が97年末の外国為替危機以降、重点的に推進してきた経済改革政策と最近の経済現況について説明いたします。韓国経済が一瞬の間に経済危機に直面した理由を、競争と効率が通用する市場経済機能が自由に作用しなかったためであると認識しています。その認識の下、韓国政府は金融、企業、労働、公共部門の4大部門に対する改革を迅速かつ強く進めてきました。
 金融分野の改革としては、経済危機の直後、不良金融機関の退出と健全性の基準を強化する等、大々的な金融構造調整を現在も引き続き推進しています。例えば、債権・資本市場の先進化、信用評価制度の改善等を通じて、金融市場及びインフラを改革し、金融機関の支配構造の改善や金融業大型化と兼業化を誘導し、金融産業の競争力向上を図っています。また、不良金融機関・投資信用機関・生命保険企業に対する金融構造調整等のたゆまぬ努力を傾注しています。
 企業分野の改革については、第1に、これまで推進してきた企業構造改革の加速化があげられます。これには負債比率の削減、財務構造の改善、上場企業の経営支配構造の改善、結合財務諸表作成、会計基準を国際基準にあわせる等があります。第2に、技術革新を通じた産業の競争力強化のため、技術力を中心に企業革新を行い、各地域別、産業別、機能別の技術開発支援事業を連携する等、効率的な国家技術革新システムを構築しています。第3に、大企業の核心力量を集中させるために、現在進行中である一部業種の事業構造調整を早期に終了し、系列企業間の不当な内部取引も徹底的に調査しています。
 韓国政府は、経済危機を招いた根本的な原因の1つとして「労働市場の硬直性」があると認識し、労働市場の柔軟性をさらに強化する措置を推進しました。具体的には、97年から98年にかけて2回にわたり労働法改正を行い、経営上の理由によって解雇を行うことができる「整理解雇制」を導入いたしました。また、弾力的な勤務時間制(フレックスタイム制)を導入し、98年7月からは人材派遣制を実行したことによって、企業の労務管理の面での弾力性が飛躍的に向上しました。さらに、勤務時間や退職金制度等に対する勤労基準制度の合理的な改編方案の準備中です。これらと併せて、従来の「闘争的な労使関係」では、更なる経済成長に限界を来たすことを痛感し、政府、労働者、雇用者がお互いに協力する「新労使文化」の創出にも力を注いでいます。
 公共部門の改革については、これまでの大々的な人員削減と民営化、競争と成果原理導入等の実績を基に、引き続き改革措置を推進しています。公企業など、傘下機関の経営を革新するため、民営化を計画どおりに推進し、構造調整作業も早期に終了させる予定です。そして、2003年の均衡財政達成を目標に、年度別の赤字の管理目標を設定し、財政支出の効率化を向上させる等、継続的な財政改革を推進しています。また情報技術(IT)を活用する知識・電子政府実現のための施策も推進中です。  これらの積極的かつ政策的な努力と韓国国民の努力によって、韓国経済は現在確実に安定した動きを維持しています。経済成長率では98年の-6.8%から99年には10.7%へと世界でも例のない驚異的な回復を記録しました。

【 他国に比べて韓国が持つ有利な投資メリット 】

 韓国は成長潜在力が大きい力動的な市場です。年平均9%にも及ぶ経済成長を遂げており、さらに将来南北統一が実現すれば、1億近くの購買力を持つ市場が形成されるものと予測されます。また世界的に高水準の造船、半導体、自動車、鉄鋼等の資本財産業が基盤であるため、産業間の連係が次第に重要になってきました。港湾、空港、電力、通信等インフラ整備が構築されている点にも更に注目される点です。
 韓国は21世紀にも躍動的な経済発展を見据え、知識経済への基盤を強化しています。何よりも、韓国は優れた人材を豊富に有しております。韓国の大学進学率は世界第3位であり、毎年35万人以上の高級人材が大学から輩出されています。そして、日本とほぼ同じ水準の労働力を1/3程度の費用で活用することができます。また製造業と情報通信産業が融合し、新たな経済パラダイムに適した産業分野が創出され、革新的なアイデアと技術がビジネスに繋がると共に情報インフラ基盤も大々的に拡充されています。従って、21世紀の韓国経済の未来は非常に明るいと言えるでしょう。
 韓国は、12億の人口という巨大な市場を持つ中国、世界第2位の経済大国である日本、そして潜在市場であるアセアンとの中心に位置しています。特に、今年6月に開催された南北首脳会談を契機に、南北経済協力が拡大すれば、最も戦略的な位置として浮上するでしょう。この様な地理的利点を最大限に活用し、実質的な北東アジア物流・流通の中心地となるために、韓国政府は韓国の西側の仁川に国際空港を建設中で、南側の釜山にも国際的な水準の港湾建設事業を推進しています。この様に陸上・海上を通じた国際物流の中心 地として位置付けられれば、韓国は世界市場に対する戦略的な前線基地として変貌するものと思われます。
 アジアの中では韓国と日本は唯一のOECD加盟国であり、地理的にも最も近接し、教育、技術、所得水準も非常に類似していると言えます。日本の海外投資も、過去における単純な低賃金の活用から、戦略的提携や広域分業のような「水平的協力」に転じています。これらのことからも韓国は最も有力な協力パートナーとして活用できるものと思います。

【 韓国政府が推進してきた投資環境改善の努力 】

 韓国政府は、98年外国人投資促進法を制定し、規制を主とした既存の投資制度を、新しいパラダイムに転換しました。
 まず、韓国政府は、全ての1,058対象業種の中で、4種の業種を除いた1,054の業種を外国人投資家に開放し、99.6%の投資開放率を見せています。資本市場では外国人の株式所有制限を撤廃し、企業及び金融機関の対外取扱いを大幅に自由化しました。今年末までには、為替取扱いを完全に自由化し、短期預金、海外預金、借入等を自由化する計画です。また、98年6月からは外国人投資家の不動産取得制限なしに売買できるように制度を改善しました。
 さらに、外国人投資手続きを大幅に簡素化しました。従来、外国人が投資を行うためには、全部で4つの段階が必要とされましたが、新しい法律では、事前承認の手続きなしに、単純申告と外資到着後の登録手続きだけで済みます。
 また、外国人投資企業が工場設立時等の事前承認を得るために必要な請願書のうち、主な請願内容が許認可を受けた場合、付随の請願についても一緒に処理なされたものとみなす「一括処理制度」や処理期間内の請願が処理されなかった場合、処理されたものとみなす「自動承認制度」、一部の請願書が不備な場合にも、優先的に承認する制度も導入され、外国人投資家の便宜が最大限に図られるよう配慮しました。
 他方、外国人投資家が韓国への投資に全く不便さを感じることのないように、投資に関するワンストップサービス体制を確立しました。98年4月、KOTORA内に外国人投資支援センター(KISC)を設立し、投資相談から工場設立までの全ての行政手続きを専門に担当、支援しています。また昨年10月には外国人投資オンブズマン事務所を設置し、既に投資を行った外国人投資企業が、韓国国内での営業活動の際に障壁となった金融、租税、労働、建築、学校等、各種の経営上の問題や生活上の隘路事項を専門のホームドクターを通じて解決にあたっています。

【 部品・素材産業を中心とした日本と韓国の協力増進方案 】

 韓国は、重要産業である部品・素材産業が十分に発達できなかったため、貿易収支不均衡、景気変動に脆弱な産業構造となっています。特に、機械類と機械部品は慢性化した赤字構造を見せています。また、日本企業も最近の国内景気の低迷、円高の状況下、信頼できる外国事業パートナーを探し、投資協力、部品調達協力をする“グローバルソーシング”が必要であると思われます。従って、両国間の部品・素材産業の協力は、お互いの需要が一致し、両国のプラスになると思います。特に韓国政府は、日本企業をはじめとした外国人投資を通じて、部品・素材産業を育成するとの基本認識の下、この分野に対する積極的な投資誘致政策を推進しています。例えば、部品・素材企業に対しては、技術開発資金等への政府支援が行われ、中小企業分類基準を緩和し、相対的により多くの特典を付与するように配慮しています。
 韓国は、投資の対象地として豊な潜在力を持っています。そして、今こそ皆様が韓国に投資する最良のチャンスであると考えます。皆様が韓国に投資なされば、韓国政府はあらゆる支援を惜しみません。我々は皆様の投資を必要としています。

 なお、租税減免、立地支援、労使安定支援など外国人投資に対するインセンティブに関する詳細については省略してあります。ご関心のある方はセンターまでご連絡ください。

 

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