福井アドバイザーの 海外ビジネスコラム

第26回 日本と中国のビジネス感覚の違いについて

(公財)富山県新世紀産業機構 アジア経済交流センター
海外ビジネスアドバイザー 福井 孝敏

「2021富山県ものづくり総合見本市」が今年10月に開催される。今年はこれまでにない「異例の」開催となる。即ち、昨年から世界を席巻しつつある「新型コロナウィルス感染症」が完全には収まらない中での開催となる。会場に現物を出展して、出展者が訪問者に直接出展物の紹介や商談を行う方式に加えて「オンライン上」での商品出展や商談を行う方式もあり、と言う事になっている。

毎回、海外からの参加で圧倒的に出展者が多いのは中国である。筆者は中国ビジネスに20年余携わったが、その中で感じた日本と中国のビジネスの進め方の違いについて感じた事を振り返ってみたい。 

1.中国では意思決定は「トップダウン」

最も頻繁に指摘される事だが、企業の意思決定のやり方で、日本は所謂「ボトムアップ」であるのに対し、中国は「トップダウン」である点である。 日本は事務レベルで先ず検討がなされ、進めるべきと判断されれば上層部に持ち上げ、最後にトップが決定する。 一方、中国は最初の段階からトップに情報が上げられ、そのトップが決めたらそれが企業の方針として決定される。従い、意思決定が速いし、それに基づいて直ちに行動が始まる。

2.中国では「考える前に動く」!

1とも関連するが、中国は「考える前に動く」が、日本では「動く前に考える」。やや誇張して言えば、中国では「儲かる」と思えば次の瞬間には「着手」するが、日本では「儲かる」と思っても「さまざまな法律や規制に合致しているか」を考え、OKとなって初めて行動する。
個人的に経験した事であるが、原油価格急騰時に自動車燃料にメタノールを使用出来ないかと世界的に検討されたが、中国ではそれが公認される前に燃料とした自動車が走り始めた。日本では考えられないことである。 中国ではまさに「既成事実」を作ってから「法律」を作るのである。

3.中国では「早く市場に出す」

従い、中国では「早く市場に出す」ことが一番重要であるが、日本では「売れるかどうか徹底的に時間をかけて検討してから」動き出す。

4.中国では「より良いものを、より安く」

「価格」についても大きく異なる。日本では「より良いものは、より高い」のは当然と考えるが、中国では「より良いものを、より安く」である。「より良いものをより安く」販売して先ずは市場を押さえる事が重要と考えるのである。

5.中国では「品質」「機能性」が良ければよい

「品質」について言えば、日本では「品質」に加えて「外観」も重視するが、中国では「品質」即ち「機能性」が良ければ「外観」にはそれほど拘らない。ある意味、「日本料理」と「中華料理」の盛り付け方を比べれば分かりやすいかも知れない。

6.信頼関係は取引を続けていく中で醸成されれば良い

これまでの事と重なるが、日本では結果を出すまで「ステップを踏む」事が多い。即ち、結果を出す前に相手との信頼関係を醸成することが大事と考える。 中国では信頼関係は取引を続けていく中で醸成されれば良いと言った感じである。先ずは「結果」(儲かる事)が大事と考える。

以上、かなり個人的な印象であり、実際は社風や人柄による違いも大きいのかも知れないが「大なり小なり」実際にこうした傾向はあるのではと考えている。 

2021年 6月 8日 記